スプリンギンマガジン
ヨンデミー✖️スプリンギン 開発者対談【後編】
「ヨンデミー」の開発者である笹沼社長と、「Springin'(スプリンギン)」の開発者であるしくみデザイン代表の中村俊介が、この度のコンテスト開催に向けて対談を行いました。後編となる今回は、コンテストによせるお二人の思いを語っていただきました。
読書が好きになる「読書体験」を
中村:それでもういきなりアプリ作りに入ったんですか?
笹沼:1番最初は実はアプリを作らず、読書の家庭教師をやってみて、実際に本が好きになるのか三ヶ月検証しました。最初の月はオフラインでやってみて、次の月はオンライン(zoom)でやってみて。最後の月はLINEとGoogleフォームだけでやったんですよ。おすすめの本をLINEで送って、感想をフォームで送ってもらうんですよ。そしたらスプレッドシートに読書記録が溜まる。それを僕らが見て次のおすすめ本をLINEで送る。それだけのサービスなのに、有料でも続けたいって言って貰えたんですよ。これがアプリになったら、もっとゲームっぽくできるし、読書にハマるしかけもたくさん作れるなと。これは上手くいくと思って、そこからアプリを作り始めました。
中村:それは大学在学中ですか?
笹沼:はい、大学3年の時にこの会社を立ち上げてます。ちょうどコロナのタイミングなんですよ。
中村:ちょうどzoomとかも急速に広まった。
笹沼:そうなんです。緊急事態宣言の時には僕らはLINEとGoogleフォームを使ってた段階だったので問題なく、そこから投資を募って開発が始められたと。
中村:めちゃめちゃテンポの良い理想的なスタートアップの始まりですね(笑)
笹沼:そうなんですけど、苦戦もしました(笑)
中村:苦戦したんですか?!順調なイメージでしたが・・・。
笹沼:はい、最初は順調だったんですが、壁もありましたね。本をおすすめするAIは元々僕がやってた事をAIにしただけなんで、既にノウハウがあったんです。AIは優秀だったので、最初は口コミで広まってユーザーさんも増えていったんですが、ある時から増えなくなってしまって。ユーザーさんにヒアリングをしてみた所、続けてくれるご家庭は、保護者の方がAIにおすすめされた本を、子供に読ませてくれてたんですよ。でもそれができるのは一部のリテラシーの高い層だけで、普通は親が子供に本を勧めても喧嘩になるし読んでくれませんと。本を借りてきて部屋に置いてあっても、隣にYouTubeがあったらそっち見ちゃうよと。それを聞いて、一気にアプリのゲーム化を進めました。その開発に一年位かかりましたが、フルリニューアルしてから一気にユーザーが増えました。
中村:なるほど。それはいつくらいの話ですか?
笹沼:フルリニューアルが終わったのが2022年の終わりで、2023年が伸びはじめた年ですね。夏休みに急激に伸びてて、規模は小さいですが、ここ半年で言うと有料ユーザー数が倍になってます。
中村:倍!それはすごい!それではこのグッと登った所で、次は何をやろうとかありますか?
笹沼:実は今月リリースした新機能で「ハナシテミー」というものがあって。ヨンデミーでは読み終わった本の感想を入力してもらう所があるんですけど、多くの子は「面白かった」とかの一言になりがち。そこをAIキャラクターと本の内容についてチャットすることで感想を引き出してもらえるんです。どんな所が面白かった?とか、どのキャラクターが好きだった?とかですね。それを最後に文章で要約してくれる。つまり話してるだけで感想が出来上がる。
中村:それは文章を書くのが苦手な子にいいですね!
笹沼:「読書」って本を読むことだけで終わらなくて。感想を誰かと話すとか、本について考えるとか、アウトプットすることも全て読書体験だと思っていて。本を読むだけで読書を終わらせたらもったいない!と思っているんですよ。なのでこのハナシテミーというサービスで、「読書体験を深めていく」ということに取り組んでいる所です。
中村:ヨンデミーさんの中で「本」ってどこまで入ってますか?
笹沼:会社としては全部ですね。図鑑でも漫画でもいいし、物語だけじゃなく伝記やノンフィクションでもいい。
中村:なるほど。雑誌とかでも?
笹沼:雑誌でもいいです。AIが紹介するのはいわゆる読み物ではあるんですけど、僕らは「本」というより、「書」をイメージしてるんですよね。そういう意味では全部と思っています。ただそれらを全部楽しむために鍛える必要がある能力は「文章を読む力」なんですよね。読み物が読めたら、そこから雑誌や漫画は行けるので、まずは読み物をベースに力を上げてあげる。読める本の幅を広げてあげる。それは難しいレベルの本を読めるようになるというのもあるし、興味の持てるジャンルの幅を広げてあげるのもある。縦と横に読書の幅を広げることをゴールにしています。そのために読み物をベースにしていますね。
中村:スポーツで言ったら基礎体力みたいなものですね。
笹沼:読書教育の世界では「自律した読み手」という言葉があります。「必要な時に、必要な本を見つけて、必要なだけ読むことができる」読み手。必要っていうのは学びにも心にとっても、ですね。本に救われた、本を活用したという読書体験があって、本が必要なタイミングがわかる。その時自分に必要な本を選べる力というのも、読書の幅が広くないと難しい。絵本だけから、とかではきっと難しいですよね。それでかつ、必要な長さが読める。ヨンデミーはそのような自律した読み手になって、読書の世界を自力で駆け回れるようになるまでを補助輪的にサポートするサービスです。
読書体験の新しいアウトプットに
中村:笹沼さんはスプリンギンにどういったイメージを持っていましたか?
笹沼:僕もノーコードでプログラミングができる教材とかは結構見ていたんですけど、スプリンギンは本当にすぐできる!圧倒的なハードルの低さ。教育者目線で見た時に、衝撃的にUI/UXが卓越していたのが印象強いです(笑)他とは全然違う思想で作られているなと。ブロックを組み合わせるプログラミングみたいな物は、プログラミングを簡単にしたというイメージですが、スプリンギンは作ることそのものに特化しているというか、子供の遊びという感覚で、すごく良いなと思いました。
中村:ありがとうございます!
笹沼:子供達にとって動きを表現できるツールってあまり無いと思っていて。例えばレゴとかで恐竜を作りました、という時に、子供の頭の中でその恐竜って動いてるんですよね(笑)おままごとしてる時とかもそうですけど、ぬいぐるみが頭の中で動いてる。それがそのまま形にできるという体験がスプリンギンならできますよね。僕達のサービスでは、読書体験のアウトプットは特性上どうしても言葉を使ったものになってしまうので、僕達には出来ない方法で表現できるのが面白いなと思っています。
中村:今回のコンテストテーマは「読書感想ワーク」なわけですが。
笹沼:感想って「言葉」なんですよね。でも本を読んだ時に受け取るものって言葉だけじゃない。気持ちとか、風景のイメージとかが頭に浮かんでると思うんですけど、言葉にしないと感想が書けないんですよ。そのイメージをそのままアウトプットしてくれたら良いなと思った時に、スプリンギンなら動く絵本なり、本の世界を舞台にしたゲームなり、そういうものが出来るじゃないですか。
中村:スプリンギンからしても元の作品があって、そこから自分なりの表現をするという、今までと違った面白い試みが出来そうです。
笹沼:大人の読書家の人たちって、本を読んだ時に情景が目に浮かんだりとか、キャラクターが喋り出したりとか、その場の匂いをイメージ出来たりすると思うんですけど、子供達はそれをまだ知らない。なのでコンテストに参加した子供達の、本を通じた楽しみ方が、一歩深いものになったら良いなと思っています。ここから、読書体験をより深く楽しむ。発想を広げて自分のイメージをアウトプットしていく。そういう事に繋がる橋渡しとして、すごく良い企画なんじゃないかなと思っています。
中村:いいですね。僕もスプリンギン側から同じことを思っていて。スプリンギンはとにかく作品を作るのが早い。すると「作ること、表現することって楽しい!」となる。これが増えてくると、表現するためのインプットが必要な事に気づく。すると勉強を始める子が出てくるんですね。ちゃんと理科やってないと動きが上手く作れないとか、ストーリーを作るなら国語大事だから本を読まなきゃとか。実際スプリンギンを授業で使ってる先生のお話を聞くと、「面白い作品を作る子はみんな成績が上がってます」と言っていて。次にこんなゲームを作ろうと思ったら、まず情報を入れないといけない。自分の中にあるものではすぐに枯渇してしまうから。
笹沼:本当のクリエイターですね(笑)
中村:それがすごく良いなと思ってるんですけど、スプリンギンそのものはインプットの手助けは何もしていない。好きなものを好きなように作ってほしい思っているからですね。でもインプットを手助けしてくれるようなサービスがあるなら、ぜひ使ってほしいんですよ。だからヨンデミーさんとのコラボはすごく嬉しい。
笹沼:なるほど。うちだったら読書ですけど、音楽とかイラストとかでも出来そうですね。
中村:今回のコラボでインプットが作品作りにすごく大事だなと気づいてくれる人が、何人かでもいたら、すごく意味のある事だと思っています。
笹沼:西日本では読書感想「文」ではなくて、読書感想「画」のコンクールがあったりするんですよ。
中村:読書感想をスプリンギンで表現する、が普通になったら面白いですよね!
笹沼:本を読んで作った作品リスト化されて、その作品のクリエイターを見たら、その子が読んだ本と作った作品が並んでたりしてたら面白いですね(笑)
中村:ちょっと一個のジャンルになりそうな気がしました(笑)
笹沼:学校とかで試してみてほしいですよね。
中村:ですねえ。